世界を支えているのは、小さな、小さな素材。
今、目の前のPCで設計しているのは大規模集積回路(LSI)。このLSIチップには、1,000~100,000ほどの半導体素子が使われており、それらを組み合わせて作る回路のサイズは、小さいもので0.3ミクロン程度。花粉の1/100ほどの大きさしかありません。そんな回路が大量に配置されたLSIチップが私たちの身の回りにある家電や自動車をはじめとした様々な製品の中に組み込まれていることは、みなさんもご存じだと思います。私たちの生活そのものを支えていると言われるほど、現代のモノづくりに半導体の技術は欠かすことができません。だから半導体の設計開発ができるエンジニアの需要も尽きることがない。私自身も最先端領域で力をつけて、技術者としての市場価値を高めていきたいと思い、半導体開発を手がけるエンジニアを志望しました。先端領域に携わるということは、それだけ技術的なハードルも高い。技術革新のスピードも速い。肉眼では見ることすらできない小さな世界に、広大な世界が広がっているんです。
最短ルートが正解とは限らない。
半導体開発の世界では。
大規模集積回路(LSI)を設計する時は、設計ツールを使って、極小の世界を人間が視認できる大きさに拡大します。そのソフト上で、集積回路を組み上げていく。半導体チップに部品を配置して、最善のルートで回路同士をつなぐ。効率良く最短ルートでつなげば、「それで解決」ではありません。回路と回路をつなぐ配線同士が近すぎて、製造するときに配線がくっついてしまいショートをおこして、電流が他の経路にも流れてしまうことがあります。しかもたった0.001ミクロン、ズレただけでも、不具合が起こっている箇所にはバイオレーションというエラーが表示されます。一つの大規模集積回路図の中に、数億ものバイオレーションが発生することもあるんです。一つずつ対応していてはキリがない。さらに一つのエラーを解消したら、相互作用で他の箇所に新たなバイオレーションが発生することもあります。一体どうすればいいのか途方に暮れてしまう。そんな時には、いつも、とある先輩エンジニアの顔が浮かびます。
平日も、休日もずっと楽しい。
そんな好循環の「回路」をつくる。
配属後付きっきりで教えてくれた、とある先輩。当時、一つのチップのバイオレーションを全部解析するのに2週間以上もかかってしまう私に、諦めず真剣に向き合ってくださいました。「焦らないで。本当の原因はどこにあるか考えてごらん」。目の前の事象にとらわれず、源流まで遡って考えてみる。それがいちばんの近道であることを教えてくれました。億単位のバイオレーションが発生した際にも、根本原因を一つ解決しただけで、数百万個のエラーが消滅。魔法のようでした。先輩の背中を追って数年。当時、2週間以上かかっていた解析は、1日でできるように。今、本当に仕事が楽しいですね。余裕ができたことで、最近はオフの時間もさらに充実しています。配属先で親友もできました。休日は小旅行を楽しんだり、水族館に行ったり。また、学生時代に始めたチェロは、社会人になっても続けていて、演奏会にも定期的に出演しています。仕事の時間、休日の時間どちらも楽しい。私の人生に好循環ができているなあと感じています。