ケータイは、技術の玉手箱。
携帯電話は小さいボディの中に、様々な技術が詰め込まれています。その開発に携われば幅広い知識を得られると思い、携帯電話を開発するメーカーへの配属を希望しました。私がマイナビEdgeに入社した2000年代当時、携帯電話の開発競争は勢いを増していました。技術力の高いエンジニアが集まる設計現場。一つの端末を開発するために、50人〜100人ほどの精鋭がチームを組み、プロジェクトを進めていました。私もその一員となり、ガラケーやスマホのハードウェア設計を担当。年に2回、新しい機種が出るごとに新型機の開発に携わってきました。設計仕様書の作成、回路設計、使用する部品の選定、試作機づくり、実機検証だけでなく、量産を担う工場ラインの立ち上げまで、一貫して任せてもらいました。ここで設計開発に携わった数年間は、配属前に想像していた以上に様々な経験ができ、幅広いスキルを獲得することができたと思っています。また、メーカーの社員とマイナビEdgeの技術者の仕事内容には一切の違いがなく、責任のある立場を任せてもらえる。常にやりがいを持って、仕事に向き合うことができる環境でした。
自分のイニシャルが入った、
世界最小の精密部品。
入社3年目の2009年。日本におけるモバイル決済の先駆けとなるシステムが搭載された端末、そのハードウェア開発担当に抜擢されました。メインで担当するのは、モバイル決済サービスを使用するために携帯電話に搭載されるアンテナ形状の精密部品を新しく開発すること。しかも、小型化が進む新型ケータイに搭載するためには、当時の平均的な部品の大きさの半分にしなくてはならない。開発チームの中でも「それは無理だ」という声が上がっていました。でも、私は絶対に諦めたくありませんでした。限界を自分で決めて、後で後悔することが嫌だったからです。まずは、当時流通していたアンテナを徹底的に研究。1mm以下の調整を何度も重ね、いつの間にか実験のために数えきれないほどのアンテナを手作業で製作していました。そして、ついに、正常に動作する最小の形状に到達。その形は偶然にも、自分の名前の頭文字の「D」。結果的に、完成した新型アンテナは当時の世界最小を下回るサイズだったのです。その時は、鳥肌が立つくらい嬉しかったことを今でも覚えています。
技術者にとって大切なのは、
手よりも口を動かすこと。
世界最小の新型アンテナの開発。もちろん、それは一人で成し遂げた訳ではありません。近くにいる同僚は勿論ですが別ジャンルの技術者にも、何度も相談を持ちかけながら、知識やアイディアを吸収していきました。自分一人にできることは限られています。だからこそ、まずは周りの人たちから謙虚に学ぶ。新人の頃は仕事を覚えるよりも先に、人の顔を覚えていました。技術者として大切なことは手よりも口を動かすことだと、私は考えています。当社のようなアウトソーシングの企業で働くメリットは、多種多様な設計開発業務に携われる機会があること。開発環境や時代のニーズに合わせて、配属先を柔軟に変えることができます。配属先の変更希望を出す時、私自身は営業やサポート担当の社員にやりたいことをあえて明確には伝えません。そうすることで、自分が想像もしていなかった選択肢やチャンスを示してもらえるから。周囲の人たちの声に耳を傾けることは、仕事に向き合う時だけでなく自分の人生の可能性を広げる時にも大切だと思っています。